概要

イギリス王室代理ウィリアム・ホブソン海軍大佐と約500名のマオリ首長の間で締結されたニュージーランドの建国文書。英語版ではマオリがイギリス王室に主権(sovereignty)を譲渡する一方、土地所有権を保証するとされた。しかしマオリ語版では「カワナタンガ」(統治権)の譲渡とされ、「ティノ・ランガティラタンガ」(首長権)は保持されると解釈された。

歴史的背景

1830年代にはニュージーランドにイギリス人入植者・商人・宣教師が増加し、マオリとの土地取引をめぐるトラブルが頻発していた。フランスの植民地化の動きも脅威となり、イギリス植民地省はマオリとの正式な合意による統治権獲得を急いだ。宣教師ヘンリー・ウィリアムズがマオリ語への翻訳を担当したが、この翻訳の不正確さが後世の紛争の根源となった。

地形・地理的特徴

ワイタンギはニュージーランド北島ノースランド地方ベイ・オブ・アイランズの南岸に位置する。温暖な亜熱帯気候で、複雑に入り組んだ海岸線と豊かな漁場がマオリの集落を支えた。ベイ・オブ・アイランズはヨーロッパ人捕鯨船の寄港地として早くから接触が進んだ地域であり、条約締結の舞台となったのは歴史的必然であった。

歴史的重要性

ニュージーランドの建国文書として最高の法的・政治的地位を持つが、英語版とマオリ語版の解釈の相違は200年近く紛争の原因であり続けている。1975年設立のワイタンギ審判所は条約違反の申し立てを審査し、マオリへの補償と権利回復を進めている。先住民と植民者の関係を規定する条約としてカナダやオーストラリアの先住民政策にも影響を与えた。

参考文献

  • Orange, C. 'The Treaty of Waitangi' (1987)
  • Moon, P. 'Te Tiriti o Waitangi' (2002)