概要

第20王朝のラムセス3世が、東地中海全域を荒廃させた「海の民」の大規模侵入をエジプト国境で撃退した。ナイルデルタの水上戦と陸上戦の二方面で決定的勝利を収め、ペリシテ人、テケル人、デニェン人などの連合軍を破った。メディネト・ハブ神殿の壁画に詳細な戦闘場面が刻まれている。

歴史的背景

紀元前13世紀末から12世紀初頭にかけて、東地中海世界を「青銅器時代の崩壊」が襲った。ヒッタイト帝国の滅亡、ウガリトの破壊など、地中海東岸の文明が連鎖的に崩壊する中、エジプトは最後の主要国家として侵入者に対峙した。

地形・地理的特徴

ナイルデルタの河口部は、複数の分流と湿地帯からなる防御に適した地形。ラムセス3世はこの地形を利用し、海からの侵入者をデルタの水路に誘い込んで殲滅した。デルタの浅瀬と狭水路は大型船の機動を制限し、エジプト側の小型船による近接戦闘を有利にした。

歴史的重要性

エジプトが青銅器時代の崩壊から辛うじて生き残った唯一の主要文明であることを示す。しかしこの後エジプトも衰退期に入り、新王国は終焉に向かう。海の民の一部はパレスチナに定住しペリシテ人となり、聖書の歴史に登場する。

参考文献

  • Cline, E.H., '1177 B.C.: The Year Civilization Collapsed'
  • Redford, D.B., 'Egypt, Canaan, and Israel in Ancient Times'