概要
タワンティンスーユ(インカ帝国)全域を結ぶ総延長4万km以上の道路網(カパック・ニャン)。2本の幹線道路(海岸道と高地道)が南北に走り、多数の支線で東西に結ばれていた。チャスキ(飛脚)による駅伝制で情報を伝達し、タンボ(宿駅)が約20-30km間隔で設置された。吊り橋は植物繊維のケーブルで建設され、一部は長さ60m以上に達した。
歴史的背景
パチャクティ以降の帝国拡大に伴い整備が加速した。道路網は軍隊の迅速な移動、貢納物の輸送、情報伝達のインフラとして帝国統治の生命線であった。チャスキは1日に約240kmの距離を走破でき、クスコから帝国辺境まで数日で情報を届けることが可能であった。
地形・地理的特徴
アンデス山脈の全域を縦断し、海岸砂漠から標高5000mの峠、さらに熱帯雨林の縁辺部まで多様な地形を通過。急峻な山岳地帯では石段や吊り橋が建設され、砂漠地帯では直線的な道路が敷かれた。標高差と地形の多様性に対応した工学的解決が随所に見られる。
歴史的重要性
ローマ帝国の道路網に匹敵するインフラとして、車輪なしに建設された点で工学的に驚異的。2014年にカパック・ニャンとして6カ国にまたがるユネスコ世界遺産に登録された。帝国統治のモデルとして行政学的にも研究対象となっている。
参考文献
- Hyslop, The Inka Road System
- D'Altroy, The Incas