概要
パチャクティ(在位1438-1471年)がチャンカ族の侵攻を撃退したのを契機に、クスコの一地方王国から南北アメリカ最大の帝国へと急速に拡大した。タワンティンスーユ(四つの地方)と呼ばれ、現在のペルー、ボリビア、エクアドル、チリ北部、アルゼンチン北部、コロンビア南部を支配。人口は推定600万〜1200万人。
歴史的背景
パチャクティはクスコを計画的に再建し、太陽神殿コリカンチャを中心とする壮大な帝都を造営した。息子トゥパク・インカ・ユパンキが北方(チムー王国征服)と南方に拡大し、孫ワイナ・カパックがエクアドルまで版図を広げた。ミタ制(労働奉仕)、キープ(結縄記録)、インカ道路網が帝国統治の柱であった。
地形・地理的特徴
アンデス山脈を中心に、海岸砂漠から熱帯雨林まで多様な環境帯を統合した。首都クスコ(標高3400m)はアンデス高地の盆地に位置し、周囲の山々が天然の防壁を形成。帝国はアンデスの南北4000kmにわたり、標高差6000m以上の環境を支配した。
歴史的重要性
文字を持たずに大帝国を統治した唯一の例として世界史上特異な位置を占める。4万km以上のインカ道路網はローマ帝国に匹敵する土木事業であり、段々畑や灌漑技術は高地農業の到達点。スペイン征服により1533年に崩壊した。
参考文献
- D'Altroy, The Incas
- Moseley, The Incas and Their Ancestors