概要
鴨長明の『方丈記』(1212年成立)は、1177年の安元の大火、1180年の治承の辻風(竜巻)、同年の福原遷都、1181年の養和の飢饉、1185年の元暦の大地震という五大災厄を記録。「ゆく河の流れは絶えずして」の冒頭で知られ、無常観に貫かれた災害文学の傑作。平安末期の社会不安を反映する。
歴史的背景
平安末期は源平の戦乱に加え、自然災害と疫病が重なった危機の時代であった。養和の飢饉では京都だけで4万2千人以上が餓死したと伝えられる。鴨長明自身も下鴨神社の神職の家系に生まれながら後継争いに敗れた没落貴族であった。
地形・地理的特徴
盆地である京都は夏の高温多湿が疫病の温床となりやすく、木造密集市街は火災に脆弱であった。鴨川の氾濫も度々市街地を襲い、平安京は自然災害のリスクが高い都市であった。
歴史的重要性
日本文学史上初の本格的な災害文学・随筆文学であり、『枕草子』『徒然草』と並ぶ三大随筆の一つ。災害記録としても貴重で、平安末期の社会状況を知る一級史料。無常観は日本文化の基底をなす思想として現代にも影響を持つ。
参考文献
- 『方丈記』鴨長明
- 『平家物語』