概要

紀貫之が土佐守の任期を終えて帰京する55日間の旅を、女性の筆に仮託してかな文字で綴った日記文学。「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」の冒頭は日本文学史上最も有名な書き出しの一つ。海路の旅の描写と、亡き娘への哀惜が全編を貫く。

歴史的背景

古今和歌集の撰者であった紀貫之は和歌の第一人者であったが、漢文日記(男性の公的記録)ではなく、かな文字による私的日記という新ジャンルを創出した。かな文字の表現力を実証する画期的な試みであった。

地形・地理的特徴

紀貫之が土佐国(高知県)から京都への帰途を記した紀行文。土佐から紀淡海峡を経て大阪湾に至る航路は、室戸岬沖の荒波や紀伊水道の潮流に左右される危険な航海であった。

歴史的重要性

日本文学史上初のかな日記文学であり、のちの蜻蛉日記・和泉式部日記・紫式部日記など女流日記文学の先駆けとなった。かな文字による散文表現の可能性を開拓し、源氏物語に至る物語文学の基盤を築いた。

参考文献

  • 『土佐日記』紀貫之
  • 『日本古典文学大系』