概要

ツバル、キリバス、マーシャル諸島などの太平洋低地島嶼国が、地球温暖化による海面上昇で国土消失の危機に直面している。IPCCの予測では21世紀末までに最大1メートル以上の海面上昇が見込まれ、ツバルの多くの地域が居住不能になる可能性がある。高潮・サイクロンの激甚化、珊瑚礁白化、淡水資源の枯渇が複合的に作用し、「気候難民」の発生が現実の問題となっている。

歴史的背景

産業革命以降の温室効果ガス排出の大部分は先進工業国によるものだが、その影響を最も深刻に受けるのは排出量がほぼゼロの太平洋島嶼国である。この「気候正義」の不均衡が国際交渉における太平洋島嶼国の道徳的権威の源泉となっている。太平洋諸島フォーラムは気候変動を「太平洋にとって最大の安全保障上の脅威」と宣言した。

地形・地理的特徴

ツバルは9つの環礁からなる世界で4番目に小さい国で、最高地点はわずか海抜4.6メートル。珊瑚礁上に形成された極めて低平な国土は、海面上昇に対して最も脆弱な地形である。地下の淡水レンズ(珊瑚礁内の淡水層)は海水浸入により縮小し、農業用地の塩害が深刻化している。キリバス、マーシャル諸島も同様の危機に直面している。

歴史的重要性

気候変動が具体的に国家の存続を脅かす最初の事例として、国際政治に大きな影響を与えている。ツバルのイアン・フライ国連大使のCOP演説は世界を動かし、太平洋島嶼国は気候外交の最前線に立っている。「国土が水没した場合の主権の帰属」という前例のない法的問題も提起されており、国際法の新たな展開を促している。

参考文献

  • Farbotko, C. 'Wishful Sinking: Disappearing Islands, Climate Refugees and Cosmopolitan Experimentation' Asia Pacific Viewpoint 51 (2010)
  • IPCC Special Report on the Ocean and Cryosphere (2019)