概要

1994年1月1日、NAFTA(北米自由貿易協定)発効日に合わせ、サパティスタ民族解放軍(EZLN)がチアパス州の複数の町を占拠した。覆面姿のマルコス副司令官(後にガレアーノ副司令官)を広報的指導者とし、先住民の権利、土地改革、民主化を要求した。メキシコ軍との武力衝突は12日間で停戦に至ったが、EZLNはその後も自治コミュニティ(カラコル)を維持。インターネットを駆使した情報発信は「最初のポストモダン革命」と呼ばれた。

歴史的背景

チアパス州はメキシコで最も貧困な州の一つであり、マヤ系先住民は植民地時代以来の土地収奪と差別に苦しんでいた。1992年にサリナス政権がNAFTA準備として憲法第27条(農地改革の基盤)を改正し、共有地(エヒード)の私有化を可能にしたことが直接的な引き金となった。PRI(制度的革命党)の一党支配65年間の腐敗と先住民排除への怒りが蓄積されていた。解放の神学の影響を受けたサムエル・ルイス司教の活動も背景にあった。

地形・地理的特徴

チアパス州はメキシコ最南部に位置し、グアテマラと国境を接する。ラカンドン密林(セルバ・ラカンドーナ)はメソアメリカ最大の熱帯雨林の一つで、サパティスタのゲリラ拠点となった。チアパス高地(標高2000メートル超)にはツォツィル族やツェルタル族のマヤ先住民コミュニティが集中する。険しい山岳地形と密林がゲリラの隠蔽を可能にし、メキシコシティから地理的・経済的に最も遠い周縁地域の一つであった。

歴史的重要性

グローバリゼーションと新自由主義に対する世界的な抵抗運動の先駆けとなった。先住民の権利を国際的議題に押し上げ、2001年のメキシコ先住民権利法(不十分ながら)の成立につながった。反グローバリゼーション運動、世界社会フォーラムなどの市民運動に思想的影響を与え、武力に依らない新しい社会運動のモデルを提示した。

参考文献

  • John Womack Jr., 'Rebellion in Chiapas'
  • Subcomandante Marcos, 'Our Word is Our Weapon'