概要

1981年6月、アメリカCDCがロサンゼルスのゲイ男性5人のニューモシスチス肺炎を報告し、後にAIDS(後天性免疫不全症候群)と命名された。1983年にリュック・モンタニエらがHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を分離同定。2023年までに世界で累計約8,560万人が感染し、約4,040万人が死亡した。サハラ以南アフリカが最も深刻な被害を受け、一部の国では平均寿命が20年以上低下した。

歴史的背景

HIVは20世紀初頭にカメルーンのチンパンジーからヒトに感染したと推定される。アフリカでの植民地支配下の労働移動、都市化が拡散を促進した。1960年代以降、国際的な人口移動、性の解放運動、注射薬物使用の広がりがウイルスのグローバルな伝播を加速させた。初期にはゲイ・コミュニティの病気として偏見と差別が感染者を取り巻いた。

地形・地理的特徴

HIV/AIDSはサハラ以南アフリカの熱帯雨林地域で霊長類からヒトへのウイルス伝播が起きたと推定される。コンゴ民主共和国のキンシャサが都市部における初期拡散の中心地とされる。植民地期の都市化、人口移動、医療行為(非滅菌注射器の反復使用)がウイルスの拡散条件を提供した。後にサンフランシスコ、ニューヨークなど欧米の大都市でゲイ・コミュニティを中心に流行が顕在化した。

歴史的重要性

感染症対策における社会的要因(貧困、差別、ジェンダー)の重要性を認識させた。抗レトロウイルス療法(ART)の開発によりHIV感染は管理可能な慢性疾患となったが、治療へのアクセス格差は南北問題の縮図となった。PEPFAR(米国大統領エイズ救済緊急計画)や世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立など、グローバルヘルスの国際的枠組みの構築を促した。

参考文献

  • Randy Shilts『And the Band Played On: Politics, People, and the AIDS Epidemic』
  • UNAIDS Global AIDS Update 2023