概要
ソ連の技術・資金援助により建設された巨大ダム。高さ111m、全長3830m。ナイルの洪水を制御し、通年灌漑と水力発電(設備容量2100MW)を実現。一方でナセル湖の形成によりヌビアの遺跡群(アブ・シンベル含む)が水没の危機に瀕し、ユネスコの国際救済キャンペーンが実施された。
歴史的背景
エジプトの農業近代化と工業化のためにナイルの治水・発電が不可欠であった。当初アメリカの資金援助が予定されていたが冷戦の文脈で撤回され、ソ連が代わって支援を提供した。
地形・地理的特徴
ナイル川第1急湍付近の花崗岩の峡谷にダムが建設された。上流にナセル湖(全長約500km、世界最大級の人造湖)が形成され、ヌビア地方の広大な地域が水没。ダムの下流ではナイルの洪水パターンが完全に変化し、農業と生態系に大きな影響を与えた。
歴史的重要性
エジプトの農業と工業に革命的な変化をもたらしたが、ナイルの洪水による肥沃化の停止、塩害の増加、デルタの浸食、漁業への影響など、環境問題も深刻。ユネスコの遺跡救済は世界遺産条約(1972年)の直接的契機となった。
参考文献
- Waterbury, J., 'Hydropolitics of the Nile Valley'
- Little, T., 'High Dam at Aswan'