概要
クック農業遺跡(クック高地)で確認された、メソポタミアや中国とは完全に独立した農業の発明。約9000年前からバナナ、タロイモ、ヤムイモの栽培が始まり、精巧な排水溝・灌漑システムが構築された。花粉分析と考古学的調査により、森林伐採、植物管理、湿地排水の段階的発展が明らかになった。サトウキビの原産地でもある。
歴史的背景
最終氷期後の温暖化に伴い、ニューギニア高地の住民は野生植物の管理から計画的栽培へ移行した。低地と高地の生態系の違いが多様な栽培植物の利用を促し、人口増加が集約的農業への転換を加速した。近東やメソアメリカの農業革命とほぼ同時期だが、穀物ではなく根茎類を中心とする独自の農業体系を発展させた。
地形・地理的特徴
ニューギニア島中央部の標高1500〜2000メートルの高地盆地。ワギ谷やクック湿地帯は火山性土壌に恵まれ、豊富な降水量と温暖な気候が植物栽培に適していた。湿地帯の排水溝跡は計画的な水管理の証拠であり、隔絶された高地環境が独自の農耕技術発展を促した。
歴史的重要性
世界の農業起源が少なくとも3〜4カ所で独立に発生したことを証明する決定的証拠。穀物栽培に偏りがちな農業革命の理解を根本的に修正した。2008年にユネスコ世界遺産に登録され、人類史における食料生産の多元的起源を示す記念碑的遺跡として評価されている。
参考文献
- Denham, T. et al. 'Origins of Agriculture at Kuk Swamp' Science 301 (2003)
- UNESCO World Heritage Centre - Kuk Early Agricultural Site