概要
ボリビアがチリの硝石採掘企業への増税を行ったことを契機に、チリがアントファガスタを占領して開戦。ペルーはボリビアとの秘密同盟条約に基づき参戦した。チリ海軍はイキケの海戦で苦戦したが、アンガモスの海戦でペルーの装甲艦ウアスカルを鹵獲して制海権を確立。陸戦ではタクナ・アリカを占領し、1881年にはリマを陥落させた。1883年のアンコン条約でペルーはタラパカ州を割譲、ボリビアは海への出口を永久に喪失した。
歴史的背景
アタカマ砂漠の硝石鉱床は19世紀後半の世界的な肥料・火薬需要の高まりにより莫大な経済的価値を持っていた。チリ・ボリビア間の国境は曖昧で、チリ資本がボリビア領内の鉱山開発に深く関与していた。イギリス資本もチリ側の硝石産業に投資しており、国際的な経済利害が絡んでいた。
地形・地理的特徴
アタカマ砂漠は世界最乾燥の地域の一つで、太平洋岸とアンデス山脈の間に広がる。この砂漠地帯に豊富な硝石(チリ硝石)とグアノの鉱床が存在した。アントファガスタ、イキケ、タクナなどの港湾都市が戦略的要衝であり、海上制海権が戦争の帰趨を決した。ボリビアの海への出口であったアントファガスタ地域が争奪の焦点となった。
歴史的重要性
チリは硝石資源の獲得により南米の経済大国に飛躍し、「硝石の世紀」を迎えた。ボリビアは海への出口を失い、内陸国となった。この「海への出口」問題は21世紀に至るまでボリビア外交の最重要課題であり、2018年の国際司法裁判所判決でもチリの立場が支持された。ペルーは首都占領という国家的屈辱を経験し、戦後復興に長期を要した。
参考文献
- William Sater, Andean Tragedy: Fighting the War of the Pacific
- Bruce Farcau, The Ten Cents War